大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(う)1355号 判決 1950年11月29日

被告人

鈴木忠治郎

主文

原判決を破棄する。

本件を千葉地方裁判所に差し戻す。

理由

検事外山林一の控訴趣意第一点について。

原判決は本件を無罪とした事由について縷述しているが、その結論的事由として「被告人は前記行動を為す際、それが人の身体に対する攻撃なる事は認識していたけれども、不法のものと考えたとは思はれないし、当裁判所亦被告人の行動を不法のものと考えないのであつて、この点で本件は証明なきものとして無罪である」と説示し、刑事訴訟法第三百三十六条後段を適用しているのである。しかし右前段の説示は恰も犯罪の成立するには所謂主観的条件として違法の認識を必要とするが如く解せられ、明らかに大審院並びに最高裁判所の判例に背馳することになるのではないかを疑はしめ、また後段の説示によると原裁判所は恰も本件について、犯罪成立の客観的条件たる違法性を欠如せるものと認定した如く解せられ、而も如何なる事由によつてその違法性を欠如乃至阻却するのかこれを明示せず、また若し違法性を阻却するものと認定したとすれば、本件は刑事訴訟法第三百三十六条前段の罪とならない場合に該当し原判示のように同条後段の所謂犯罪の証明がないと為すことはできない。而してその他原判決理由の全趣旨を査閲考察すると原判示のような犯罪の証明がないという理由を理解するに苦しむところであり、加うるに或は更に審理を尽すにおいては所謂傷害致死罪を認定し得らるるに非ざるかを疑うに足り、結局原判決は刑事訴訟法第三百七十八条第四号の判決の理由にくいちがいがある場合に該当するものと認め爾余の論旨について更に判断を俟つまでもなく同法第三百九十七条に則り原判決を被棄するを相当とすべく論旨は結局理由があることに帰するから弁護人のこの点に関する主張は排斥せざるを得ない。

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